年内最後のゼミ

今日は

D1滝口さん「出羽三山の空間変遷史 近世から近代にかけての信仰世界の変容」

M1あづみ「都市“喪失”の心象風景 ー文学作品と災害に着目してー」

M1てら「近代建築運動におけるドイツの工作概念」

滝口さん「出羽三山の空間変遷史 近世から近代にかけての信仰世界の変容」

[発表]

・近世から明治維新後における羽黒山湯殿山の空間構造の変化について

1)羽黒山
・近世において、荒沢寺は羽黒山奥の院でありながら登拝口であり、常火を管理する御堂があった
明治維新以降、中心的(求心的)改革を行う西川宮司により、修験と対立しながらも仏的施設や祭礼が消滅されていった
・残されたわずかな寺院のなかで修験が存続していくが、そこで荒沢寺が主軸に

2)湯殿山
湯殿山の祭祀権と、持火に関する神話や由緒の正統性について、羽黒山を中心とする天台系寺院と真言系四カ寺が対立
・明治以降、湯殿山は古来から一貫した仏山だと主張し神祇官と対立。しかし明治7年に国幣小社に定められ、西川は三山兼任の宮司(=三山統合)へ

 

[質疑]

・なぜ荒沢寺だけ残されたのか
→修験者たちは仏教を捨てて神社の職員(神職)として勤務するようになったが、羽黒山仏教に対する信仰を神祇官側が完全に排除できなかった、修験信仰の深さの表れ。僧侶が完全に神職に転化することはなかった。

・今回の発表における重要な宗教的テーマ「火」(常火・別火・法火・上火…)
→常火:血液が流れるイメージから繋がったのでは?(常火堂のもと)
→対立する羽黒山と四カ寺は「じょうび」の表記を「常火」と「上火」で区別している

・宗教的縁起や由緒の解釈が度々の抗争の武器になっていた
→今見ている縁起などは近世に描かれたものだが、対立など諸事情のなかで歴史が上書きされてきたことがあっただろう。近代的解釈が作用している可能性はある

・身体性との関わり
→血液や登山という運動など

 

あづみ「都市“喪失”の心象風景 ー文学作品と災害に着目してー」

[発表]

・研究背景:都市が変貌するとき、記述者はどうあるか。数人の文学者の主観的視点から都市という実態のないものを描き出す手段をみる
・主観的記述(文学)と客観的記述(実証研究)、前者を優先させたい
関東大震災における直後の体験記と少しあとで執筆される小説のあつかい
・北原糸子さん『関東大震災の社会史』から震災の全体像をみる

 

[質疑]

・文学者による表現を通して都市の生々しさを描く必要があるのか
・文学における表現上の特性とは。絵画など他領域との差異。間接性?
・横軸(震災などの一局面)と縦軸(川端など一個人)はどちらを重視?
→一個人を見ながら、その人自身の人生と震災などの社会的現象を擦り合わせていく

・小説と体験記について。小説はフィクション?
→フィクションの可能性もあるが、背景にはそれまで経験してきた空間喪失(=震災など)があるはず

 

てら「近代建築運動におけるドイツの工作概念」

[発表]

・19世紀末以降のドイツにおける「デザインとしての建築」と「生産体系のなかでの建築」という2つの立場の緊張感
ドイツ工作連盟(Deutscher)とバウハウス(Bauhaus)に関して語彙上の概念から組織時における意図とその後の建築家によるデザインを読み解く

 

[質疑]

・工作のおもしろさとは
→建築家の「どうつくるか」という本質的な問いをドイツ建築家の「工作」という概念からみる

ドイツ工作連盟創設時における理念のなかに組織名の由来が記載されているのではないか
→確認中

・1つの先行様式から脱出して「工業」という手段でドイツ工作連盟を組織した。しかし実際に作られているものを見ると新古典主義に回収されてしまっているという結果がある。従来の様式に対するカウンターパートとして組織されたという見解で、実際の建物を考察できないか

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