20161102ゼミ
今日はM1三人の発表です。
■中村「東京港における埋立実例と行政の関連性」
[発表]
・前期を通して、研究背や目的を今一度整理
・東京論に関する言説は20年ごとにテーマが更新されていくが、「首都性」という言葉はどの時代も関与しているのではないか
・港湾管理者の制度が確立されたのが1950年の港湾管理法
・港務局の存在
・東京大学伊藤研究の渡邊大志氏の研究「近代東京港湾の都市史研究ー水と陸の境界の倉庫群の配布をめぐってー」
[質疑]
・港湾管理法はどのようなことを目指して制定されたのか?
→戦後GHQがアメリカの体系を日本の港湾にそのまま落とし込もうとしたが頓挫してしまい、それが結果として港務局から港湾管理者へとシフトしていった。
・東京湾の権利関係は?船着場を民間が所有できるのか?
→海の権利関係は明確ではなく、埋立事業を国政が行うのか民間が行うのかによってその後にその土地を
・渡邊氏の論文を、仮設の立て方・方法・などをきちんと見ながら読むと良い。倉庫に着目するとなぜ都市史的な話へと発展するのか。
・東京湾が歴史的に外力を受け大きく変化したような実例はないのか。
→戦前の埋立が開始する前の隅田川改修工事などを経て、戦後埋立が始まると民間が流入していく過程が面白いのではと考えている。
・民間が埋立に流入するとなにが面白いのか
→60年代には都市のインフラ整備に関し民間が関与すること、大規模工場が興隆していくことが起こっている。
湾岸が東京の都市論において重要なのであれば、一般的な東京湾論が、タブララサや迷惑施設を置くだけという論じ方は不十分なのではないか。
・東京という中央政権がなぜ湾岸部に注目したのか
・30年代の水辺の埋立事業が、60年代の埋立の興隆につながる大事なファクターだったとしたら?
■芦谷「時間地図と都市」
[発表]
・「重税都市ーもうひとつの郊外住宅史ー」(中川理1990)を読んで。
・日露戦争から第一次世界大戦前後の間の、産業資本の確立による労働人口の大量吸収などにより、東京郊外に住まざるをえない状況が生まれた。
・家屋税も郊外移住に拍車をかけ、市内と市外の宅地における課税格差が大きかった。
・都内の私鉄3線であり、副都心から同様に南西にのびる京王・小田急・東急の3線を研究したい。都市の社会システムの影響による沿線の比較。
[質疑]
・従来の郊外住宅化の捉え方は、地価などの経済論理と鉄道などのインフラ整備によってもたらされたと進歩史観的な歴史の捉え方で述べられがちだが、中川氏の論は、郊外化というものは税制を通してそれが政策的に行われたことを主張している。
・朱引ラインの少し内側=東京市の周縁部において、重税が課された。
・朱引ラインの外側の郡部の町村においては、インフラ整備より先に人口を集め税金徴収することが優先だった。
・鉄道沿線部を見ていくとしても、その駅から徒歩何分とか、公園が近いとかなどの与件が複雑に絡んでいる。
・電車の中にある郊外住宅地の広告を見ると、上記の与件が書かれていることが多い。
・時間地図の限界値を明言すべき。鉄道の所要時間のみで作成した時間地図から、都市論を構成するにはその次の2次的ファクターが多元的すぎていて、条件を整理するのが難しい。
・そこに住まいを構える人々が、どのような与件を基準に場所を選定しているのか、という問いは税なのかインフラなのか時間なのかセキュリティなのか。例えばワラビのクルド人を見ていてもなぜワラビにいるのかは全然わからない。
・中川氏の論文も、解像度をあげずにまとめあげいることがポイントで、大きな話として傾向的に述べている。
・公共性の強いサービス(学校・宅配業者の末端・バス)などは時間地図的に配置が決定されているのではないか。時間によって空間とサービスが組み立てられていると考えると、その組み立て方にも何かルールがあるのかも。
■西「議会政治とその建築形態の関連性」
[発表]
・「議会の進化:立憲的民主統治の完成へ」を読んでそもそも議会政治とはなにか知識を得た。
・中世から近世にかけて議会政治がどう確立されてきたか、王政から議会制民主主義へと変換した、と言うための定義とはなにか。
・絶対君主制から議会に権利が偏っていく経過には、経済的要因と思想的要因が関与している。
・革命よりむしろ議会における立憲的取り決めや交渉が西洋の民主主義を生み出した。
[質疑]
・社会主義国における議会建築はどのようなものか。例えばベトナム・中国など。
・日本の国会議事堂についての研究はあるのか。
→長谷川尭
・議会の空間と、政治のやり方や精神は関係するのか?(椅子の配置など)
→官僚のいる席と議員のいる席にレベル差があると議会が偏向している場合が多いなどの既往研究がある。
・議事堂の見方のポイント整理をし、空間と政治の関係性を紐解く。
今日の三人の議論は根本的な問題意識に関してであり、「なにをやりたいのか?」を問うようなものでした。
論文を構成するにあたり研究背景・目的がいかに重要かが身にしみているM1勢です。
ひとまず、12月の中間発表まで突っ走りましょう。
m1 中井