サブゼミD班 3回目

サブゼミD班の1,2回目と順番が前後しますが、D班3回目について書きます。

 

■今までのながれ

 D班では1回目にクリフォード・ギアーツ『インボリューション ̶内に向かう発展NTT出版(2001)を読み、インドネシアのジャワにおける農業のインボリューションについて学び、2回目ではマイク・デイヴィス『スラムの惑星ー都市貧困のグローバル化明石書店(2010)で第三世界のアーバンインボリューションについて学んできました。

 

■3回目の概要

 3回目の前半では布野修司『カンポンの世界 ジャワの庶民住居誌』PARCO出版(1991)を読み、第三世界のアーバンインボリューションの具体を解像度を上げて理解し、更にジャワの都市形成の歴史を合わせてみていく事でアーバンインボリューションに対する理解を深めました。そして3回目の最後で、三浦展『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』NHK出版(2011)と門脇耕三編集協力『「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係』LIXIL出版(2015)を参考にしながら、これまで学んできた社会の中でのインボリューションの概念と、ギアーツ的な生態学的見方を応用して日本のシェア型消費社会についての考察を試みました。

 カンポンの世界では仕事を分け合ったり住む場所を分け合う貧困の共有が、農業のインボリューションやアーバンインボリューションで見てきてのと同じように起っていました。しかし都市部の居住地区内に同じ農村出身者が集まって住んでいるという状況で、ジャワ人が伝統的に持っていた相互扶助の精神が強化され『スラムの惑星』でみた貧困の共有とは違ういきいきとした印象を受けました。

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注)布野修司『カンポンの世界 ジャワの庶民住居誌』PARCO出版(1991)より

 

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 日本のシェア型消費社会については、脱工業化や戦後経済成長期の家族モデルの解体をに伴って都市に単身者が流入し、そこでシェアの需要が高まり市場が拡大する。都市が単身者の住みやすい環境となり、更に単身者が増加するというサイクルで理解しました。現在の日本のシェア型消費社会をインボリューションというには内に向かわせる力や内に向かう発展を促進する力が弱いと感じますが、今後そういった外圧が大きくなったときにインボリューションを起こす可能性はあると感じました。

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■全体を通して

 前期の間インボリューションについて考えてきて、始めは新しい概念で特別なもののように思いましたが、3回目を終えて、インボリューションはなにも特別なものではなく、進化(もしくは外に向かう発展)と表裏一体に起きていることのように感じました。何か新しいものや事が起きるとそれまでになかった(もしくは認識されていなかった)系がセットされ、1度その大きな外向きの発展が起きた後にはその系の中を洗練させるような内向きの発展が起こり、そこに外に向かわせない力や内に向かう発展を促進する力が外圧として加わるとインボリューションが起こり、外に向かわせない外圧が外れたときまた新たな進化が起る、その繰り返しのように思いました。

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m2平場

サブゼミA班3回目

更新が遅くなりましたが、サブゼミA班3回目の様子についてです。

 

A班のこれまで2回の発表では、V. スカーリーの書籍を取り上げ、建築の形がどう変形されていくかという視点から建築史を組み立てる方法を見てきました。

3回目では上記のようなスカーリーの手法を用いて、日本の近・現代住宅建築を形態の変化から見るということに挑戦しました。

 

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(時代順に建築写真と図面を並べ、何が議論できそうか話し合う)

 

発表では、50年代〜80年代で10年ごとに分けて議論を進めました。各年代ごとにいままでとは違う視点で流れを見ていくことができたと思います。以下資料の一部と簡単に議論の内容をまとめます。

<50年代(※30・40年代も含)

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「前川邸」「森博士の家」などモダンリビングの形式から、ミース的な均質空間「住居(丹下健三)」「コアのあるH氏のすまい」へと変化し、「スカイハウス」「から傘の家」では正方形平面で形式性、中心性のある強い空間を提示していく流れが読み取ることができるのではないか。

 

<60年代>

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前回アメリカのニューシングルスタイルの建築家として取り上げた、チャールズ・ムーア「シーランチ」のようなピクチャレスクな建築を、日本の狭い敷地で実現しようとしたという意味で、東孝光「塔の家」は縦に展開し、原広司「伊藤邸」では横に展開し折り曲げて変形したと捉えられるのではないか。

 <70年代>

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ここでは、キューブやコルゲートシートを用いて自立的な形をつくり、建築にまとわりついたあらゆる伝統を断ち切ろうとする建築家の葛藤が見られる。また共通して階段によるアプローチを持ち、外界から内部へと人が入っていくイメージがある。

f:id:aoi-lab:20150806123940j:plainかなり建築の形が持つ意味が多様化し、「ドーモセラカント」には物語性や地域性が見られ、「住吉の長屋」「中野本町の家」ではユーザーが空間をどう経験するかということが考えられている。外在的な根拠に基づいて形態を決めている印象がある。

 

7/17のプチゼミ旅行では「戦後日本住宅伝説」展を見に行き、模型や動画を見ることで改めて議論の復習ができました。( 3回目の発表は7/8でした)

サブゼミで建築史を扱うのは初めてで不安がありましたが、m2最後のサブゼミで建築に関する議論がたくさんできて本も読めて、個人的にはとても楽しく勉強になりました。

 

m2吉永

 

 

 

7/23 ゼミ発表 A班 4回目

前期最後のゼミ発表の報告です。

 

陳穎禎 「清末から日本植民地時期まで台湾阿里山地域における畜産物交換所に関する研究」

[発表]

・商人主義で、漢民族と先住民が接続されていた状況が近代的

・中央集権的システムの導入により変化 していく

・ネットワーク全体の変化は、ただその構図に変化が起きるのではなく、それを構成する一つ一つの単位にも変化が及び一つ一つの変化があってこそ、ネットワークの変化は起こりうる

[質疑]

・「城」という表記はそぐわない時代もあるので、訂正したほうがいい。

・民間事業者によって接続されていた漢民族

・先住民の関係性(緊張感)と、政府によって統治された 後の(民間事業者の排除の後)両者の関係性(しかれている制  度の違い)では、各々の境界線の質は全く異なるのでは。

 

池田薫 「二子玉川についての調査と、それを踏まえた自由が丘の比較」

[発表]

二子玉川の歴史(第一次産業としての砂利、遊園地の建設:別荘地としての利用、日本初のSC建設)

二子玉川と自由が丘の比較(地理面・街づくりの担い手・交通 etc)

[質疑]

・遊園地の建設、とあるが向ヶ丘遊園と同じ原理?→遊ぶ場所、別荘地として計画されていた。当時 はかなり”遠い場所”と認識されていたのでは。

・自由が丘は一般市民によって少しずつ形成されていった街であり、二子玉川は民間企業によって計画 されてできた街。立地条件などは似ているものの、成り立ちが全く違うので比較対象にはならないのでは。→再開発の成功例・失敗例を探してみては。

 

吉永ほのみ 「東京湾内湾沿岸漁村集落の歴史的変遷に関する研究」

[発表]

・切絵図、地形図などから空間の変化を追った(比較する上での変数を抑える為、似た地形のものを選 択した)

・船溜まりの消失&持続、当時の敷地割の特徴の継承、海沿い住宅の消失&遊歩道の整備 

[質疑]

・船溜まりの存在は確認されても、どんな船があるのか(産業として漁業が残っているのか)

・永代一丁目付近に、品川と同じような形式で船溜まりがあるので確認してみては。

・1931~45年に埋め立てられた土地に、海を引き込んだような場所がある。船溜まりを作ろうとした のではないか。

・海苔が主要な産業の一つになった、とあるが海苔を干す為には広いスペースが必要になるかと思うの で、その観点でも調査してみては。

 

祐川牧子 「設計競技からみるリージョナリズムについて」

[発表]

・各設計競技の行われた年表の制作

・1970sを境に、求められるテーマが、国→地域、と変化する。

[質疑]

・各設計競技の審査報告書や、各雑誌においてどのようにフォロー&批判されているか、調べてみては。

・地域性のあり方について海外の例との比較をしてみては。

 

芦谷龍征 「ヤミ市由来の商店街について」

[発表]

・都内のヤミ市由来の商店街、3件の調査報告(吉祥寺ハモニカ横丁、野方文化マーケット、ハモニカ 横丁ミタカ)

・店舗の構成、住民⇆店主のコミュニケーション、ヤミ市らしさ

[質疑]

・ミタカの例において、ヤミ市らしさがでてこない、とあったがそもそもヤミ市は「とりあえず作った もの・仕方なく作ったもの・移築してできたもの」であり0からデザインした場合にはそういった、不便さ:ヤミ市らしさ、がでてこないのは当然では。

ヤミ市は本当に意図されていないものなのか、デザインされていないものなのか。 →それぞれの中 には固有の秩序があり、それが蓄積した結果があの光景なのでは。

 

(議事録作成:b4 佐川)

 

m2 吉永

7/15 ゼミ発表 C班 3回目

平場晶子「近世から現代までの銀座•日本橋路上空間の変容に関する研究」

[発表]

  • 江戸期の日本橋通り、明治期の銀座通りのパース化
  • 対象の年代の切り方、各年代の情報のまとめ

[質疑]

  • 朝鮮使節団と路上空間の関連性
  • 鉄道馬車の距離、鉄道馬車の駅は路上中にあったのか
  • 昭和の前後半も路上の変化が起こっているのではないか

 

弓削田宏貴「19~20世紀における建築家による「地域社会」的論とその展開について」

[発表]

  • 原広司「空間<機能から様相へ>」のまとめ
  • 均質空間論について

[質疑]

  • 地域社会論と均質空間論がどのように繋がっていくのか

 

中村彩「湾岸エリア豊洲における住宅の変遷から見る住民階級」

[発表]

  • 豊洲の歴史について
  • 都営住宅と住宅建設5箇年計画について

[質疑]

  • 豊洲と他の町との発展の違い
  • 豊洲内に所得別のコミュニティの有無

 

塩田航「異邦人の手記 イザベラ•バード 日本奥地紀行」

[発表]

  • 日本奥地紀行の背景(イザベラ•バードの人物像、Unbeaten Tracks in Japan)について
  • 日本奥地紀行の旅程について

[質疑]

  • イザベラ•バード自身の興味で行った場所があったのか
  • この研究の進め方(新しい視点)があるのか

 

 

B4 芦谷

7/9 ゼミ発表 B班 3回目

小見山滉平「大宮東口における土地所有の変遷と建物と商店の関係」

[発表]

・住宅地図を用いて1980-2000年の建物利用状況の変遷を調査

[質疑]

・駅からの距離と土地、建物の大きさの関係

・住宅地図だと土地の所有関係はわからない、戦後の状態の復元→火保図を探す

・一般に駅との近接性が重視される業種(金融ビル、学習塾、チェーン居酒屋等)が大宮東口では集積しない

 

西恭平「個人化、無縁化社会と建築」

[発表]

・前回までのテーマ「都市型墓地」から「個人化・無縁化社会における建築」へとテーマを変更

・「おひとりさま」について

[質疑]

・「おひとりさま」化していく都市空間や生活に予想される変化とは

 

佐川芳孝「いちょう団地から考える、これからの日本の地域社会モデル」

[発表]

・高齢の日本人夫婦と多国籍な移民が居住する「いちょう団地」について

[質疑]

・いちょう団地に関わる制度的・政策的背景と、いちょう団地の歴史的変遷

トランスナショナルコミュニティー

・多国籍住民向けの商業・宗教施設が周辺に増加するような現象は見られるか

 

神崎竜之介「関東大震災後東京に建てられた銅板を使用した建物に関する研究」

[発表]

・板金屋さんへのインタビュー

[質疑]

・板金学校の成り立ち、背景、銅板葺きの技術について

・インタビューの項目

 

 

M2 吉永

7/2 ゼミ発表 A班 3回目

門間翔大「災害に応答して提案されたプロトタイプ住宅からみた近代建築史の研究」

[発表]

・牧紀男『災害の住宅誌 人々の移動とすまい』(鹿島出版社、2011)を読んで勉強

・災害 を経る中で、すまいのあり方が、戦前までの賃貸住宅主流から高度経済成長期で土地つき持ち家

主流へと変遷してきた

[質疑]

・身軽な都市(賃貸住宅が多くを占める都市)における建築的アプローチとは

・災害/復興/建築の全体像の話をできるようにする

 

大谷剛「M. フーコーの『牧人=司祭型権力論』から見る隔離統治の実態ー建築空間を利用した教義=ドグマの浸透ー」

[発表]

・小畑清剛『近代日本とマイノリティの「生-政治学」ーシュミット・フーコーアガンベンを中心に読

む』(ナカニシヤ出版、2007)と療養所「愛生園」の資料を照合し、隔離統治と療養所施設配置の関係

性を確認

[質疑]

・施設配置の読み方について

 

吉田郁子 「房総半島中山間集落の限界集落化への変遷 インタビューからみる千葉県市原市月出」

[発表]

・インタビューで得られた情報のグラフ化

・文献から、東京一極集中による地方消滅の危険や、人口データの見方を勉強

・今後、民家実測などにより文化景観の復元作業

[質疑]

・人口動態などメタな視点と民家実測などミクロな視点のつながり

限界集落の価値をどのように位置づけるか

・過疎化のメガニズムとプロセスに関する分析の枠組み

 

平場晶子「近世から現代までの銀座・日本橋路上空間の変遷に関する研究」

[発表]

・参考資料の整理

・明治以降の銀座について

・明治時代以降の東京の都市計画にどのような大きな力が働いていたか

[質疑]

・参考資料の選定基準

・個人が公的な空間を占拠することに関する規制と個人の応答

・銀座通りに面する空間のアクソメ図に時代ごとの路上空間の様子を書き込む

 

富山大樹「清水寺の伽藍と門前町

[発表]

清水寺境内空間の歴史的変遷について『清水寺史』を参照し図を作成するなどして考察

・『清水寺参詣曼荼羅』に描かれている参拝ルートが現在と異なることを指摘

・古くから「清水信仰」が人気

[質疑]

・伽藍維持の財源の変遷

・管理体制による参拝ルート

 

 

M2 吉永

家具プロジェクト

はじめまして。

B4のなかむらです。よろしくお願いします。

先週の木曜日に家具プロのプレゼンがありました。

毎年お世話になっている光本さんにもいらしていただきました。

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B4みんなで並んで作業でーす

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今回は青井先生の部屋に本棚と効率の良い作業スペースを確保するデスクを設計します。

7月中には最終的な案が完成する予定です

また更新しまーす

 

B4なかむら

 

6/18 ゼミ発表 C班2回目

塩田航「異邦人の手記などから追う 日本の暮らし」

[発表]

イザベラ・バード『日本奥地紀行』のマッピング、生活に関わる記述を抜き出し考察

○今後、バードの『日本奥地紀行』に関する先行研究や参考図書を読み進める

[質疑]

・著者の視点を項目ごとに整理してまとめるのがいいのではないか

・著者の旅行の背景(観光情報や持参した地図など)、旅行当時の日本の時代背景を勉強

・どのような切り口で取り組んでいくか→徹底的に先行研究を集め、目を通すこと

 

弓削多宏貴「19-20世紀における建築家による「地域社会」的論とその展開について」

[発表]

布野修司『戦後建築論ノート』(相模書房,1981)を勉強

○論文の枠組み

[質疑]

・「近代国家」「権力」という言葉の使い方について

・切り口や視点を定めるための足がかりをつくる

 

中村彩「湾岸エリアにおける建物と住民の関係」

[発表]

○豊洲地区の過去10年間の人口動態について、統計データを収集

○町別の建物比較を行い、不動産価値や間取り(→家族構成)のデータ収集

[質疑]

東京湾の埋め立ての歴史

・臨海地域の住宅政策の歴史

 

 

M2 吉永