2017/05/25 A班ゼミ
今日は、フーコー著『これはパイプではない』を読了したA班の皆さんの発表でした。
テーマ:建物の経年変化と周辺環境、イギリス庭園、寝床の変遷、テクノロジーと建築家、砂利産業、街区型都市計画
以下、概要です。
ちさと「建物の年齢・時間の流れを考える」
[発表]
・降雨による壁面の水垢、物が擦れた事による壁面の傷など、建物の微細な変化は環境的外力が作用して引き起こされている
・ギブソンのアフォーダンス概念を元に、これらの事象を把捉できるかもしれない
[質疑]
・建物の老化=町に馴染んでいくことになるのか。廃墟は町に馴染んでいるのか。
・バックグラウンドの異なる建物が同様の環境下に置かれていくことで、類似した経年変化をたどる。均一性とか多様性という視点のみで語られないのが面白いのではないか
・経年劣化の観察というより、それに対する人間の知恵/技術にこそ面白さがあるのでは(例)木材の木割り
・現代建築と古建築における老朽化の捉え方の違い(現代建築にとっては悪、古建築にとっては味)
・建物の経年変化は素材の応力が大きい。外的環境と建物素材の化学反応の研究を通して、デザインの際の新しい手法へと漕ぎつけるかもしれない
さくしょ「イギリスの自然観-庭園の歴史」
[発表]
・イタリア式、フランス式、オランダ式など既存の庭園形式から影響を受け、イギリス式庭園は体系化されていった
・イギリスでは軍人や作家が貴族より先に不規則な風景の中の美を発見していた
・「自然と人工」という対立のようで紙一重であるようなことに関することの論考に発展できないか
[質疑]
・古典主義とピクチャレスク(単一論理の拒絶)という2項対立
・人為の種類 “自然に見える”
・自然(しぜん/植物/非人工物)と自然(じねん/生成物/構築的/作為的)の相違について。後者は18C中期に本居宣長の作った概念
・美の範疇(カテゴリー)とは→そのハードルさえ超えてしまうのが崇高意識(圧倒されること)
まりえ「家と宿の認識 寝床を通して」
[発表]
・小沢朝江『日本住居史』(吉川弘分館,2006)小川 光暘『昔からあった日本のベッド日本の寝具史』(Edition Wacoal,1990)より、日本住居における寝床のあり方の変遷を観察、宿と家の共通点を見る
・上記前者の住居史において、近代における寝床の研究が少ない
・2つの書籍から、塗籠、畳、納戸など共通した概念を確認できるが、どちらを通しても寝床が「空間」ではなく「モノ」として捉えられている
[質疑]
・S(=Substance)とF(=Form)の議論 時代によっては、FがSを連動させることがある面白さ
・空間が閉鎖的か開放的かどうかという点は、寝床のあり方に密に関係している
・財産と寝床は守りたいもの→納戸に寝床が引っ付いた(セキュリティーの問題)
・「空間」「モノ」「呼称」の関係性、これはパイプではない(絵と言表)と同様の構図になりうる
てら「テクノロジーの視点から見る建築家の思想に関する研究」
[発表]
・難波和彦『建築の四層構造 サステイナブルデザインをめぐる思考』(INAX出版,2009年)を読み、テクノロジーと建築と建築家の関係性を見る
・テクノロジーと建築の媒体として人間の身体性が考えられる。(生物学的視点?)
[質疑]
・AIの発達による建築家像の変化。歴史家はいなくなるという議論もあるが、そういうことがやりたいのか?
・19Cのエンジニアリングの発展により、エンジニアが橋などそれまでとは打って変わった構造物を生み出していった。そこに建築家はどう対応したのか?その1つの回答が、水晶宮。
いけだ「多摩川流域における流域都市の形成過程復元」
[発表]
・多摩川を上/中/下流でわけ、①地形②地質③河床勾配④河床材料という点で比較
・砂利について一般的な分類(活石/死石、玉石/大砂利/小砂利など)で整理
・小砂利は、切込砂利/普通砂利/洗砂利に分類され、使用目的/生産方法/価格/割合などで整理
[質疑]
・小砂利は河川の位置で取れる場所が変わるのか
・砂利採掘にあったって、多様な手段なりシステムなりがあったはず(採掘手法、運搬方法など)これらが地形と密に関係して、活き活きとした空間の全体像が見えてくる
・運搬時の、人件費/運搬費の変遷と兼ね合いについて
ゆーみん「日本における街区型集合住宅と都市計画の関係」
[発表]
・日本の都市において街区型集合住宅が根付かない理由や頓挫した計画について研究することととした
・今回は、「日本近現代都市計画の発展1868-2003』(石田頼房,2004,自治体研究社)『近代日本建築学発達史』(日本建築学会,1972)を元に日本の都市計画の大まかな流れ、時代区分を把握
[質疑]
・集合住宅での公共的機能(中庭など)の必要性が議論され始めたのは、主に戦後なのか?近隣住区論や田園都市構想でも既に公共性を重要視した思想があるが、これらが同時日本の都市形成思想に対して与えた影響とは
・西欧で展開していた街区型/中庭型の集合住宅が、西欧でどのように考えられていたのか、また日本の官庁や建築家はいかように捉えて輸入を試みたのか
先週までサブゼミをやっててゼミの準備に1週間もない中で、B4からM2までそれぞれがこんなに実りのある発表ができるっていうだけでとても素晴らしい。これは(多忙という意味で)鬼畜研と言われる青井研の1つの強みだと思うM2でした。
なかい