2016 5/19ゼミ発表D班1回目
今回は「モビリティーズ」を読んでいるC班の発表を報告します。
杉本「家としての宿 気安さと気軽さ」
〈発表〉
宿泊=自宅以外の場所に泊まること
⑴現在=旅の目的地にあるもの、以前=旅の目的地の道中にあるもの
⑵社交機関としての宿
明治以前=通過儀礼として若者の交流機関、現在=社交場としての利用 謝恩会/宴会
⑶宿に対する認識(家の代わり)
気軽さと気安さの違い
〈質疑〉
・気安さと気軽さの違いは?
気軽さ=すぐに泊まれる、気安さ=安心して泊まれる
・高級ホテルでのもてなしは何になる?気安さはあるのか
・日雇い労働者にとってビジネスホテルの気安さはあるのではないか?
・日雇い労働者にとってはビジネスホテルを選ぶしかない。我々がビジネスホテルを選ぶという水準とはずれている
・家の定義も曖昧 核家族の典型的な“家像”は幻想(ファンタスマゴリー)でしかない。
・⑶より⑴⑵のほうが可能性がある。通時性を踏まえた上で宿の多義性を考えるのは?
・時間の問題や定着性も重要なキーワードになりうるのでは?ex.ワーキングホリデー/クロノゲートの外国人労働者
・世界中を転々としながら働くワーキングホリデーの人々は⑴の旅の目的地が道中にあるという視点の現在の形なのでは?
・夜行バスは移動式宿
・羽田の重層長屋は家の宿的解釈?
・⑶の場合は家と宿の認識論につながる可能性はある
上川「『広告都市・東京』を読んで」
〈発表〉
⑴「トゥルーマンショー」の広告論
・「広告」=日常生活(内部)と資本(外部)を結びつけるもの。差異を生むための手段
・トゥルーマンショーの中で出てくる要素は全て広告
ex.友人が持ってくるビール/主人公がはくパンツ
・主人公さえ気がつく広告の提示の仕方=脱文脈性
⑵80年代 渋谷の神話と構造
・都市に広告を出す→都市を広告にする
⑶広告=都市 の死
・「シブヤ」という記号の崩壊→「大きな街」
・コミュニケーションの変化 ケータイの普及によりケータイコミュニケーションのためのネタ作りに現実社会がある
まとめ 都市と広告が強く結びついていた時代から、広告が離脱し情報のアーカイブ化が進んだ現代、広告のあり方はどんな可能性があるのか?
〈質疑〉
・渋谷=トゥルーマンショーの舞台
渋谷に憧れ、商品を買い、自らが広告になる、という構図の主体。それはトゥルーマンショーにおける主人公/広告/視聴者の3者を一体化している。逆にトゥルーマンショーはその構図を3層に分離した。
・情報アーカイブ化とは?
「シブヤ」というものが崩壊し、物語性が崩落し、それまで舞台装置として存在していた要素群が集積された情報アーカイブへと成り下がる。
・新たな悪夢とは?
繋がっていないと怖いという状況に対し、企業がそこに介入することはこわい。
しかしそれは今までのパルコでの構図が簡易になっただけなのでは?
シェアの裏側に大きな資本が孕んでいることの示唆?
・この一連の話が都市などの実空間にどう展開されるのか?
古谷「『東京の空間人類学』を読んで」
〈発表〉
・山手/下町の都市構成
・運河/街路/敷地という要素から東京の都市機能をみる
・特に共同長屋のことを対象に研究
〈質疑〉
・長屋の変遷がわかると、それが東京の都市論や住宅論に対しどのような視点を得ることができるのか?
都市が産業によって変化をうけてきたことが言えるのでは?
・従業員の雇用形態
・職住近接から住宅地への変化としてみるが、それをビルディングタイプで一蹴することはナンセンス
・江戸前期から都市型アパートや団地型アパートに変遷していく中でそれに対する記述が恣意的なのではないか?
・都市郊外地の工業化の変遷を見ていくこと→アウターリング的、可能性は大
・住宅の型をみる→長屋の系譜学?(問題意識は常に考えるべきだが)
芦谷「時間地図と都市」
〈発表〉
・スギウラ時間地図の紹介/分析
・鉄道移動による時間地図→快速と各駅の差異
・鉄道が全国の隅々まで侵食いていくことで日本地図はどんどん小さくなるex.北陸新幹線
〈質疑〉
・この当然視できるような話をどう調理するのか?
・鉄道によって新駅が開設されることで周辺の市街地に手が加えられていくことは、当然視できるのでは?
・金沢は北陸新幹線により大きな変曲点を迎えている。土地があればホテルを立てるとか、それは鉄道による変化でが、ある意味で当然なのではないか。
・ストロー効果=島に橋がかかったことで容易に行けるようになり、逆にあまり行かなくなる現象、というものもある。
・ある駅に焦点を当てたとき、他者線の乗り入れにより駅が新設されてないのにも関わらず、変化を与えうる。流動と停滞が生じるのでは?
・時間と密に関係している業界があれば、時間の変化と空間の変化が比例するのか否か、という話は?
各々興味深い本を読み、まとめあげた上にそこに対する共感や疑問点をあげ、みんなの議論もとても盛り上がりました。