06/16 ゼミ発表 D班 2回目

今回はD班(祐川/古谷/芦谷/上川/杉本)の発表でした。

keyword:設計競技と地域性/住宅形態とその都市構造/時間地図と東京フリンジ部/広告と都市のモール化/「家」と「やど」etc...

以下にD班5名の各発表/質疑を記述しています。 

祐川牧子「設計競技からみるリージョナリズムに関する研究」

[発表]

・1920’s後半~1930’s後半と1960’s後半~の「様式の空白」

・1960’s後半~の「様式の空白」において70’sのリージョナリズムはその模索の1つであり今日まで持続されている

・70’s以降の日本の設計競技要項には地域性を意識した言葉が使用されている

・その上で見られる理論と実践との間のギャップを見る

・19世紀末近代初期の設計競技基準が成立するまでの経緯

・諸外国における設計競技の実情と問題点

[質疑]

・コンペ=市民社会が公共的に公共財産をつくる仕組み

・倫理観が重要視される中、そこに地域性が

・日本においてはデザインの分野できちんとした形式がない→設計競技へとつながる

 

古谷優実「住宅建築の形態から見る都市構造の変遷」

[発表]

・初田香成「都市の戦後」を読了

・用途指定地域の設定、インフラ整備

・戦後の都市不燃化運動

・1950年代の再開発に伴い高層化/不燃化の区別化が図られる

・東京における住み分け論

塚本由晴「東京のタイポ・モルフォルジー」→都市における建築のタイポロジーの変容によって都市のモルフォルジーが応答する

[質疑]

・“都市構造”というワードが何を指しているのか。→ex.羽田か?東京か?

・建物から出発して東京というものを記述できたら凄いことであるがそれは東京に都市計画がないと定義づけるようなもの

・戦前の交換的借家形態から、多くの国民が中流層になった戦後には持ち家政策が台頭。これにより更に発展した経済成長が助長される。

・戸建住宅がスプロール化により面的に増加

・「住宅と土地」というもので都市が大まかに記述できそうに思えるが、そこにはインフラや地割の話が深く根付いているため実は難儀

 

芦谷龍征「時間地図と都市」

[発表]

・1960-75年の都市/建築分野のインフォグラフィックスについて

・先週取り上げた「時間地図」もインフォグラフィックスの一例

・饗庭先生の「都市をたたむ」

・都市空間と貨幣の関係性

・都市のスプロール化とスポンジ化

・現在一定水準において交通が整備された地から溢れるような地方/郊外においては、インフラと都市という関係性が成立せず、それらがどのように都市形成をなされたか

[質疑]

・時間地図で網羅しきれない部分の実態を見るのか、そこを時間地図の中に組み込んで考察するのか。

・時間地図を土台として使い、その後何を見るのか。つまり時間地図を現代版にアップグレードする作業というより、それ以降の現象や特性を見ることに尽力すべき

・都市の形成要因…貨幣の私的交換と公的税金の再分配によってできている

・スポンジ化が東京のフリンジ部(時間地図的ファクターが顕著)で起きている ex.つくば

 

上川正太郎「広告化する都市と人々」

[発表]

・80年代の代表都市=渋谷、90年代の代表都市=秋葉原、00年代の代表(都市)=ショッピングモール、の三者を、空間/構成/まなざし/行為/場所性/つながりという視点で比較

・モール化する日常

・現在の都市におけるSNSとの密な関係性→つながりの広告化

・ブランド自体が消費されている現在、人々の振る舞い(生活)もブランド化が促進されそれがSNSを通して広告化されている

・80’s(都市を)読む→90’sザッピング→00’sスクロール の後にくるのは「タグ付け」?

[質疑]

秋葉原の専門性の高さは情報アーカイブにつながるのか?

・「見られている不安」から「見られていない不安」への変化は渋谷から秋葉原/ショッピングモールに変化することに本当に対応するのか?

・ベタに考えれば現在成功している都市はうまくマネジメントされているだけで、それがここでは都市のモール化という言葉で代役されている

・都市のモール化ということが一概に言えるのか。銀座の東急の新しい商業施設は、銀座のあの場所という固有性が強く絡みついているはず

SNSによる広告化とモール化に関係性はない。モールから漏れたところにタグ付けがある。

・宇宙の缶詰

 

杉本まり絵「宿という認識のずれ」

[発表]

万葉集の中での「家」…人々が集合して形成する制度の空間(=公的)、「やど」…社会制度とは無関係の個人の自然の美の鑑賞空間(=私的)

古今和歌集では、「家」の消失。代わりに「庵」(=可動性をもつ)が台頭。「庵」…永続的ではない一時的な住まい(=仮住まい)

・それ以後の俳句(17世紀~)の中には「家」が再び登場

・戦前は都市部において借家が当然→従来遷都を繰り返してきたことが原因にあるのでは

・現在「家」も「やど」化しているのではないか?

[質疑]

・現在我々が使っている「宿」という言葉は「家」に包括されないものを指しているのでは。過去と現在で「宿(やど)」の意は全く違う

・言葉のニュアンスの違いを面白がっていると考えれば、建物に名前がつく状況を見るとそこに制度やビルディングタイプの問題が孕んでいたりするのではないか

・言葉の定義を決める条件/要因とはなにか

・現代において多様な宿泊形態が存在する背景にある社会的構造とはなにか

・「移動」と「生業」のモードの多様性

 

まとめ:テーマは多種多様ですが、記事冒頭に記述したkey wordsにもあるように、ある1つのものとそれを取りまく環境や構造を見たいという意識は皆共通して持っていると感じました。自分への戒めでもありますが、やはりそこに対しての問いの深さが重要であるように感じます。

 

m1ナカイ