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サブゼミC班 3回目

こんにちは!

M2吉田です。

順番が前後しますが、サブゼミC班3回目の報告です。

 

サブゼミC班(時間班)は、第1回、2回で下記2冊の課題図書を読んできました。

第1回:真木悠介『時間の比較社会学』(岩波書店、2003)

第2回:エドワード・T・ホール『文化としての時間 The Dance of Life: The Other Dimension of Time』(宇波彰 訳、TBSブリタニカ、1983)

 

第1回の、『時間の比較社会学』では、そもそも時間という抽象的な概念は未開社会の時代には存在せず、昼/夜、夏/冬、という異なる領域として存在し、その領域を行き来し振幅するような感覚として捉えられていたということがまず語られます。そこからどのように時間という抽象概念があらわれ、不可逆なものになり、現在私たちが持つ、無限直線で数量的で不可逆な時間の概念が形成されてきたのか、ということを社会構造の変化(未開社会から氏族社会、国家確立、一神教誕生、資本主義社会)と共に追っていきます。社会構造の変遷は時間概念の変遷でもあり、それはどんな関係性を持っているのかを見ていきました。

 

第2回の『文化としての時間』は、そこにある様々な文化やコンテクストが、時間の概念を定義しており、各々がもつ文化によって形成される時間の概念は変わってくるということ、そして各々が持つ時間(リズム)を、同期させることによって私たちはコミュニケーションをとることができる、ということを様々な事例を通して学びました。

 

第1回、2回で学んだ、「時間という概念は初めから存在するのではなく、その時の様々な社会のコンテクストが時間概念を形成する」ということ踏まえ、第3回は、建築における時間の概念と、その背景にある社会構造や社会思想との関係を見ていくことにし、鈴木博之 編『復元思想の社会史』(2006、建築資料研究社)を取り上げました。

“復元/復原/うつし/破却・抹消…” これらは建築に見られる時間概念の、考え方の様々なモードとなっています。これらの概念の定義も、このうちどれを選択するかということも、その時の社会の要請に従っています。

この本から様々な事例を取り上げ、日本において各時代にどんな建築の時間のモードがあり、どんな社会の要請があったのか、ということを議論していきました。

 

この本は3年前のサブゼミで扱ったこともあり、最初に青井先生から解説をいただきました。

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図のように、AとBの同一性の学問的保障や了解の仕方の様々なモードが、復元や復元や写しという概念として現れていて、それが時代の要請に従っている、ということをまず共有し、いろいろ事例を見ていきました。以下一部を簡単に紹介します。

 

■うつし、復元、模型

たとえば、寛永19年(1642)に江戸に建立した“三十三間堂”は、京都の三十三間堂のうつしとされているが、オリジナルである京都は千体の千手観音像を持つのに対し、江戸は一体の千手観音像。軒下や全長の寸法はオリジナルと同じだが、それ以外はうつされていない。では何をうつすことを“うつし”と呼ぶのか・・・ということが議論になり、「イベント(出来事性)」という意見が出ました。オリジナルの三十三間堂で行われる、「武士のランク付け射術(弓術)競技大会」という出来事性を江戸にうつすために必要な要素(競技に必要なスパンや軒高や少なくとも一体以上の千手観音像)がうつされ、それ以外はうつす必要がない、その結果江戸の三十三間堂ができあがります。

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↑江戸の三十三間堂

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↑京都の三十三間堂

 

他にも、札所巡礼の行程を一つの建物にうつした「曹源寺栄螺堂」はイベントをうつしているが、長崎のハウステンボスは…??城の復元はうつしでもあるのか??さらに模型の話が出てくると、どれも模型でないとは言えないよね、などなど、今までなんとなく思っていた概念がどんどん揺らいでくるような、とても面白い議論になりました。

 

■式年造替

式年造替は、一定年ごとに神社の本殿を中心とする建物を作り替えるシステムのことで、現在伊勢神宮で引き継がれていることで有名です。伊勢神宮独自のシステムだと思われることが多いですが、近世まで多くの神社で行われていました。

また、古代の様式を維持するために一定期間で壊して建て直すためのシステムだと思われがちですが、実際にはその時代の有力者の権力関係や背景を常に反映しており、徳川幕府の諸大名が自らのアイデンティティを古代に求め、古代的な建築形式の創造を補完するために式年造替が利用されるなど、様々な変化をしてきました。

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以前のサブゼミの時に話題になったそうですが、式年遷宮は、上の「復元(原)」「うつし」だけでは説明できない特殊な概念で、たとえば「先取り的復元」「一瞬だけうつし」のように解釈できる、という点は非常に面白く思いました。

 

全体を通して、第3回は、建築における時間の概念と、その背景にある社会構造や社会思想との関係を見ていきましたが、今まで持っていた概念をもう一度問い直すことができて勉強になったしすごく面白かったです。

東京駅の復元再開発が完成したり、いろいろな町の歴史をマニアックに深堀していくブラ●モリ的なTV番組がすごく増えていることとか、近代建築・近代産業遺産が次々に文化財登録されようとしていることなどを考えると、今の日本の経済状況やいろいろな社会構造が過去を見つめなおすような思想をつくっていて、それがいろんなところにあらわれているんだなぁと思う今日この頃です。

 

とても充実したサブゼミでした!!

おつかれさまでした!

 

m2吉田郁子